「言えない思い」
| 父がヘルニアの手術を1年も延ばしている。 心臓を悪くした母の世話をするために黙っていた<手術 去年の秋に電話した際、母親が口をすべらした。 父の思いがまるでテレパシーを感じるように伝わってきた。 少しボケてきている母を、安心して誰かにまかせられないに違いない。 私は遠方に住んでいるし、家庭を持っている、そして仕事も・・・・。 近くに住む兄夫婦はいるが、兄嫁に頼むとなると、母親のボケぷりを知られるのも嫌なのだと思う。 それに誰でもそうだろうが、お嫁さんに見てもらうとなると、見てもらう側も気を使うのは当たり前。 急を要する手術ではないが、放っておいていいはずがない。 そこで、春休みを利用して私一人が母親の面倒を見ながら、父の入院する病院と家を行ったりきたりすることにした。 父も私の申し出を快く承諾した。 やはり親子という物は、物言わなくても通じる事が沢山あるものだと痛感した。 自分が入院するのに、母親のボケの相談を主治医にして、専門の先生がいらっしゃる病院を見つけてもらった。<父 父は以前、頭の手術をした事があり、「最近物忘れがひどいので、見てもらおうと思っているから、一緒に行かないか?」と母に言った。 もちろんメインは母親。 すると案の定、「私はボケてなんかいない!行きたければ自分だけ行きなさいよ。」との返答<母 あぁ〜〜あ、、、前途多難。 それから1週間の入院生活。 私と母だけの暮らし。 結婚して20年、初めての親子水入らずの生活。 物忘れがひどく、テープレコーダーのように、一日何回も同じ話を聞かされる。 最初はまいったけれど、気が済むまで何度もうんうんと聞いていた。まるで初めて聞くように。 3〜4日すると、話の内容も変わってきた。が、・・・・・昔の思い出話ばかり。 薬も一日3回飲む。目薬は2時間おきに6回 それも、時々忘れている。それぐらいしかすることはないのだが、それでも忘れる。 私に注意されて何度となく「また忘れている、どうして忘れちゃうんだろう?」とぼやきながら・・・。 決して叱ったり、責めたりしないで、笑って過ごした。 食事は普段父が買ってきたり、作ったりして、大した食事はしていない。 でも、栄養のバランスが悪く、糖尿ぎみ。 母親は「そんな手の込んだ物を作らなくてもいいよ・・・。」と言うが、3食しっかりと手作りで、手を込んだ物を作り続けた。 1回だけ、私こういうの嫌いとボイコットされたが(笑) 「納豆でもだそうか?」と言うと、「大丈夫」と言いながら梅干で食べていた。 楽しかった・・・・。 全然大変とか思わなかった。 今まで何かしてもらうばかりで、何もしてあげられなかったのだから・・・。 父も母も退院後、「世話になった。今回は本当に世話になった・・・。」の連発だったが、世話なんかしていない。 こっちが親孝行の真似事をさせてもらったのに・・・・・ そう心に思っても、言葉に出して言えなかった。 どうして言葉にだして言えないか? そんな事を言葉にだしたら、私も父も涙があふれてきてしまうのがわかっているから・・・・。 言葉に出して言えない思いは、きっと通じていると思う。 そう言えば、20年前の結婚式前夜に、「長い間お世話になりました<(_ _)>」が、言えなかったっけ。 あの時と同じだ・・・・・。 両親が寂しがるだろうと普通のイベントのように結婚式を迎えたあの日のように・・・・・・ |